乳酸はどこからやってくるのか?

乳酸

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慶應義塾大学商学部卒業。フリーで活動するパーソナルトレーナー。渋谷や新宿、六本木を拠点に活動しています(東京23区は対応可能)。

本日のテーマは「乳酸」です。乳酸と聞くと「筋肉の疲労物質」というイメージがあるかもしれませんが、その実態は違うのです。

乳酸はどうやってできるのか?

私たちの人体において、「乳酸」とは一体どこからやってくるのでしょうか。

乳酸は糖が分解されて生成

結論から申し上げると、乳酸は糖から生成されているのです。

もともと私たちのカラダは、糖と脂肪からエネルギー(ATP)をつくることで生命活動を維持しています。この、糖を分解してエネルギー(ATP)をつくるプロセスの途中で乳酸がつくられるのです。

乳酸は糖がATPになる過程で生まれる

乳酸は糖がATPになる過程で生まれる

つまり、乳酸が溜まっているということは、糖質がエネルギー(ATP)として使われているということを意味しているのです。

糖質とともに人体のエネルギー(ATP)になる脂肪からは乳酸はつくられません。

 

作られた乳酸はどこへ行くのか?

前項では、「糖(グルコーゲン、グリコース)がエネルギー(ATP)に分解されているプロセスの途中で乳酸が作られる」とご説明しました。

では、糖の分解によって生成された乳酸はどこへいくのでしょうか。

実は、溜まった乳酸は乳酸脱水素酵素によってピルビン酸に転換され、人体のエネルギー(ATP)となっていくのです。

そして、それでも余ってしまう乳酸は血液中に放出され、肝臓までいき再び糖に生まれ変わります。

糖になれば、またエネルギーが必要になったときに分解されていき、乳酸が生まれるという流れが繰り返されます。

乳酸はATPか糖質になる

乳酸はATPか糖質になる

 

乳酸と疲労の関係

一度、ここまでの内容を以下にまとめます。

  • 乳酸は糖がエネルギー(ATP)になる途中で作られる。
  • 溜まった乳酸はエネルギー(ATP)になる。
  • エネルギー(ATP)になれなかった乳酸は肝臓で糖に合成される。

以上からは、乳酸がどこからやってきて、最終的にどこに向かうのかが理解できました。

 

乳酸が疲労の原因?

では、乳酸の役割について考えてみます。乳酸といえば「疲労物質」としてのイメージが強いですが、本当にそうなのでしょうか。

ここで1つの仮説を立てます。もし乳酸が疲労感の原因なのだとしたら「血中乳酸濃度が高いときが最も疲労している」ことになります。

この仮説を検証するにあたり、岐阜大学の松岡敏夫氏の意見を引用します。

乳酸は血中や筋肉などの臓器内に存在し,体内の血中乳酸濃度は通常1.0mM/l前後です。グルコースが代謝されるときに酸素供給が十分であれば,水などに代謝されますが,運動の強度が増し酸素の需要量に対し供給量が間に合わなくなり,不完全燃焼となったときに乳酸が生じます。

引用元:スポーツ・トレーニングにおける乳酸の活用法

つまり、酸素の需要が追いつかないほどに糖質(グルコース)が分解されると乳酸が生成されます。もし酸素の供給が需要に追いついていれば乳酸は生まれないということですね。

補足

10RMの重量設定で行うような高強度の筋肉トレーニングを実施すると、短時間でエネルギー(ATP)を生成しないといけませんので、エネルギー効率の良いグルコースが優先的に代謝されます(脂肪は有酸素運動のほうが代謝しやすい)

 

続いて、吉備国際大学の中徹氏の意見から引用します。

強度の高い運動の方が乳酸値が上昇し約60分後には平常時の値に戻ることが示され、乳酸が運動強度の指標として利用できることが確認できた。

引用元:健常成人の運動時における乳酸性作業域値と主観的訴え・心拍数の関連性に関する予備的検討
(https://square.umin.ac.jp/mbpt/4abst/4th-7.html)

高強度トレーニングで高まった血中乳酸濃度が、もとの値に戻るには60分ほどかかるようです。

もし乳酸が疲労をもたらす物質なのだとしたら、10RMといった高負荷を筋肉に与えた場合、次のセットをこなすには60分の休憩が必要ということになります。

だって、上がった乳酸濃度は1時間経過しないと元に戻らないわけですから。

ですが、実際は高強度トレーニングを行なったとしても、1~2分ほどのインターバルをとれば、またトレーニングを続けることができます。

当然、血中乳酸濃度は元の値に戻っていない状態です。

以上から推測できるのは、乳酸が疲労をもたらしているわけではないということです。

乳酸濃度が戻らなくても筋肉は回復してトレーニングを継続できるので、疲労感は乳酸以外の何かが原因でもたらされている可能性が高いです。

 

筋肉痛と乳酸に因果関係はあるのか?

筋肉痛の観点からも、乳酸が疲労の原因でないことが説明可能です。

筋肉痛は、トレーニングを行なった翌日~2日経過してから起こります。

もちろん、全身の疲労感も同時にもたらされているので、筋トレの翌日は朝起きることすら辛かったりします。

しかし、前項で引用した吉備国際大学の中徹氏の実験結果によれば、血中乳酸濃度は運動の60分後には元に戻るので、1日~2日が経って起きる筋肉痛との因果関係は認められないはずです。

つまり、トレーニング翌日には乳酸濃度が戻っているのに、筋肉痛やトレーニングによる疲労感が発生しているのです。原因は乳酸ではないということでしょう。

 

あとがき

いかがでしたでしょうか。

今回は、筋肉トレーニングを生化学の視点から紐解いてみたいと思い、一般的にも認知度の高い「乳酸」という用語をテーマに選びました。

本当は、高強度トレーニングのインターバルで効果的に回復する手段を提示したかったのですが、筋肉の疲労に関する明確なメカニズムはまだ研究段階のようです。

今後、新しい研究論文が発表された場合に、この記事もアップデートを行なっていきます。

 







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