シトルリンとシトルリンマレートの概要
まずは、「シトルリン」と「シトルリンマレート」の概要からお話しましょう。
そもそも、「シトルリン」と「シトルリンマレート」は異なる物質なので、両者を混同している方がいらっしゃれば、この機会に正しい情報にアップデートしておきましょう。
シトルリンは有機化合物の1種
シトルリンは、1930年に日本の学者が、スイカの成分を調べていたときに発見された物質です。
そのため、スイカの学名である「Citrullus vulgaris」に由来してシトルリンと名付けられたそうです。
前提として、この世界に存在する物質は以下のとおり分類できます。
このうち、有機化合物か無機化合物のどちらに分類されるかどうかは、炭素原子をもつかで判断できます。
シトルリンは化学式「C6H13N3O3」で表され、炭素原子(C)をもつことから、有機化合物に分類されます。
さらに、シトルリンはアミノ基とカルボキシ基という2つの官能基を持つため、有機化合物の中でもアミノ酸に分類されていきます。
ちなみに、シトルリンは体内でアルギニンという有機化合物から生成されるため、必須アミノ酸ではありません。
官能基についてご存知でない場合は、「シトルリンはアミノ酸の1種なんだ」と、ざっくり理解していただければOKです。
シトルリンにリンゴ酸を結合
ここまでご説明した「シトルリン」に、別の有機化合物であるリンゴ酸(化学式:C4H6O5)が結合すると、「シトルリンマレート」という新たな有機化合物になります。
『エクステンドBCAA』など、シトルリンが含まれるサプリメントのSupplement Fact (栄養成分表示)を見てみると、シトルリンマレートと記載されています。
筋肥大効果との関係性
シトルリンがどんな物質が理解した上で、続いては筋力トレーニングとシトルリンの関係性についてお話していきましょう。
ヒト体内の血管拡張メカニズム
結論から申し上げると、「血管拡張効果が期待される」のですが、先に血管拡張のメカニズムからご説明しましょう。
血管壁内側の内皮細胞に対して、無機化合物である一酸化窒素 (NO)が刺激を与えることで、血管が広がる。
つまり、一酸化窒素が増えれば血管が広がり、血圧が下がるといった作用が期待されるわけですが、そんな一酸化窒素は、有機化合物の1種であるアルギニンから作り出されます。
このアルギニンの前駆体、つまり前身になるのがシトルリンなので、シトルリンが増えることでアルギニンが増え、一酸化窒素が増えて血管が広がるというわけです。
パンプアップと血管拡張作用
筋トレにおいて、筋肉を大きくすることを筋肥大というのですが、筋肥大を促進するためにパンプアップという状態を作りだすことが効果的とされています。
パンプアップとは「血流量が増すことで筋線維がパンパンに膨れ上がった状態」なので、血管が広がって血の流れが良くなれば、パンプアップしやすくなります。
そして、シトルリン⇨アルギニン⇨一酸化窒素⇨血管壁内皮細胞への刺激というプロセスによって血管が拡張されれば、トレーニング時のパンプアップを促進してくれる効果が期待できるわけです。
リンゴ酸はクレアチンリン酸を増やす
一方で、シトルリンにリンゴ酸が結合したシトルリンマレートと、筋力トレーニングにはどのような関係性があるのでしょうか。
実は、リンゴ酸には体内のクレアチンリン酸を増やす作用があると報告されています(Br J Sports Med. 2002 Aug;36(4):282-9.)。
クレアチンリン酸とは、ホスファゲン機構と呼ばれているエネルギー産生メカニズムで原料とされる物質で、最短でATP (アデン三リン酸)を生成できるため、短時間の高強度トレーニングにおいて稼働しています。
クレアチンリン酸が増えれば、高強度の筋トレで筋線維を収縮させるために必要なATP (アデン三リン酸)の生成量も増える可能性があるため、筋トレの回数・セット数・最大重量などが高まるかもしれません。
シトルリンマレートに関する研究論文
ここまでにご説明してきた筋トレ効果が実際に本当なのかどうか、実験によって証明した研究論文をご紹介しましょう。
女性における最新研究(2017年)
2017年にアーカンソー大学で行われた研究で、女性を対象にシトルリンマレートを摂取した場合に、筋トレにどのような変化が起こるのか、検証されました。
この実験では、15人の女性被験者 (23歳±3歳)をランダムに2グループに分け、片方にはシトルリンマレート、もう片方には偽薬を飲んでもらいました。
正確には、片方にはグルコース8gとシトルリンマレート8g、一方にはグルコース8gのみを摂取してもらいました。
摂取してから1時間後、女性被験者たちは上半身もしくは下半身の筋トレをどちらか6セット実施してもらい、トレーニング直後に女性被験者たちの心拍数と主観的運動強度を記録しました。
結果、トレーニング1時間前にシトルリンマレート8gを摂取していたグループは、上半身および下半身の筋トレにおいて、より多く反復することができており、主観的運動強度も、特に上半身のトレーニングにおいて低いスコアとなりました。
心拍数に関しては、シトルリンマレート摂取グループとそうでないグループにおいて、特に有意な差はみられませんでした。
アーカンソー大学における本研究では、シトルリンマレートを運動1時間前に摂取することで、反復回数が増え、疲労感も減るということが、女性被験者で明らかになったのです。
男性に対する最新研究(2016年)
女性被験者だけでなく、男性を対象とした研究も行われています。
シトルリンの効果と言われているもの(未検証)
血管が拡張されることで、おそらくシトルリンの効果として期待できるだろう、と言えるものをあげていきます。
ただ、確かに研究論文で証明されていない、もしくは僕が研究報告に気づいていないものなので、参考程度に考えてください。
筋トレ後の回復を早める
血管拡張による血流増加は、トレーニングによって血液の中にたくさん放出された老廃物の除去を促進してくれます。
そうすれば結果的に早く身体が回復するし、より短期間で筋線維(筋繊維)の修復を行うことができ、筋肥大にもつながります。
動脈硬化・むくみ・冷え性の改善
「シトルリン → アルギニン → 一酸化窒素(NO)→血管拡張」という流れについてはもうご理解いただけたと思います。
実は、血管拡張には様々なメリットがあります。
まずは動脈硬化の予防。動脈硬化とは、血管がかたくなってぼろぼろになってしまった状態のことです。詰まりやすくなっているので、脳梗塞や心筋梗塞のリスクを高めてしまいます。
血管が広がれば、血栓などで詰まる可能性を下げることにつながるので、生活習慣病の予防になります。
続いてはむくみです。
むくみは血液内の物質濃度バランスが崩れることで起こる現象なので、血流が増加して不純物を取り除く速度が上がれば、むくみがとれるまでの時間も短くなります。
最後は冷え性。
特に女性に多い冷え性ですが、最近では男性でも悩んでいる方が増えています。
冷え性は末端の血管に流れる血流が少なくなることが原因。血管が拡張して血流が増加すれば、指先や足先に届く血液量も増えるので、冷え性が解消されていきます。
摂取方法
シトルリンを食べ物から摂る
シトルリンは普通の食材にたくさん含まれるので、手軽に手に入る食べ物から摂取していきましょう。
特に多いのがスイカです。次にメロン。
スイカもメロンもウリ科の植物でありますが、他にもきゅうりやヘチマなどにもたくさん含まれています。
食品名 | 含まれる量(100g) |
---|---|
スイカ | 180mg |
メロン | 50mg |
冬瓜 | 18mg |
キュウリ | 9.6mg |
ニガウリ | 16mg |
ヘチマ | 57mg |
クコの実 | 34mg |
ニンニク | 3.9mg |
(Source:公益社団法人日本生化学会)
スイカ(Watermelon)
この記事を書いていますのは2017年6月17日。なので、あと1ヶ月もすればスイカの季節です。
実は、シトルリンはスイカにたっくさん含まれるんです。
そもそもシトルリンはスイカから発見され、スイカの学名「Citrullus vulgaris」が名前の由来になっています。
100gあたり含有量
180mg(0.18g)
メロン(Melon)
スイカの次にシトルリン含有量が多い食べ物はメロンです。
メロン100gあたり50mgのシトルリンが含まれるのですが、1日に必要な摂取目安量は800mgです。
メロン100gって画像の1切れくらいなのですが、800mgを摂るには「800mg÷50mg=16切れ」にもなるので、とてもじゃないけど摂取しきれません。
メロンって食べ過ぎると舌がしびれたりするのでたくさん食べれませんし、値段もそこそこ高いので買う機会ってないと思います。
そこで、サプリメントからの摂取を考えてみましょう。
サプリメントから摂取する
シトルリンとは異なるのですが、研修報告でも効果がある程度証明されたシトルリンマレートを摂取できるサプリメントをご紹介しましょう。
エクステンドBCAAs

マンゴー味
Supplement Fact(栄養成分表示)をみてみると、シトルリンマレートが1杯あたり1000mgも含まれることがわかります。
エクステンドを買うなら絶対にマンゴー味がオススメです。
濃くしても薄くしても美味しいので、多くの方に美味しく飲んでもらえると思います。